シトラスと大阪

「音」つまり聴覚から得る情報が

群を抜いて脳裏に深く刻まれると思っていた。

例えるなら学生の頃聴いてた音楽を

久々に聴いて学生時代を思い出したり、

帰省時に地元の人たちの

使う方言を久々に聴いて、

帰ってきたなと感じさせてくれる、

アレである。

おそらく音は記憶に対して

かなり影響力はあるのだろう。

(実際に僕はよく感じる)

 

だがそれよりも

深く何かを思い出させてくれる

感覚がある事に最近気がついた。

 

それこそが「匂」つまり嗅覚である。

確かにこれには個人差はあるだろうが、

僕の身体では

これ以上にノスタルジックな感情に

誘い込まれる感覚はない。

 

普段よく行くデパートがあるのだが、

そこの5階に家庭雑貨のフロアがある。

そこのとある雑貨屋に

1つ見覚えのある芳香剤があった。

大阪時代の我が家で

使っていた芳香剤がそこにあった。

夏っぽい爽やかな

シトラス系の芳香剤だったのだが、

それは置いといて、

その匂いを嗅いだときに、

台風時の太平洋の大波を

直に食らったような、

そんな衝撃を脳に受けた。

 

その波に乗せて

8畳の長方形のワンルームの日々が

次々と彷彿された。

近くのローソンで中国人並みの

爆買いをキメて

朝までどんちゃん騒ぎをした事や、

その頃付き合ってすぐ別れた彼女の事、

芸術祭に向けて徹夜で衣装を

作りつづけた事、

そしてなにより

学校、バイト、学校、バイト

を繰り返していた忙しくも楽しい日常が

昨日の事のように蘇った。

たった1つの芳香剤で、である。

 

もはや鼻なんてこの為に

ついてるんじゃないかって思うほどに、

匂いと記憶には深甚なる結びつきがあるのだ。

 

今使ってる香水も、

部屋に染み付いた木造建築の

独特な匂いも、

記憶の1つとして

脳の奥底にセーブされる。

 

過ぎ去った頃にまたふと思い出すのだろう。

 

 

とりあえず今という時間を思い出した時に

恥ずかしくないように日々を全うしよう。

そうすればいつか「いい思い出」になるはず。

 

あの芳香剤まだ売ってるかな。

また近々行こっと。

 

 

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