あの頃、真夜中に聴こえる音なんて
鈴虫の鳴き声か、
風に揺れる木々の奏でる効果音だった。
今日この瞬間に聴こえる音は、
国道を這う鉄の塊の走行音か
酔っ払いの吹っ切れた楽しげな笑い声。
1つの林檎に針を1000本刺したような
密度の街で
人工的な音以外が聞こえてくることは
ほとんどない。
こっちにきて1番最初に苦労したのは
これじゃないだろうか。
葉っぱの擦れ合う音が子守唄だった
僕からしたら、
あまりにも酷な案件だった。
だが、このAlexandrosの真夜中の
ような環境に、
嫌悪感を抱きつつも、
心の何処かで都会を感じて、
優越感のようなものに
浸っている自分もいた。
ああ、東京で暮らしてるんだなって、
若かりし頃抱いてた夢の世界が現実に
なった今、
この感情は必然的な事である。
だんだん都会に適合していくのだろうか。
夜は長い。
真夜中/Alexandros